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フッ素塗布の効果

 「虫歯予防にはフッ素が良い」ということはご存じの方が多いと思いますが、具体的にどのようなものかを今回解説していきます。

 

​フッ素は歯にどのような効き目があるのか

 フッ素が虫歯予防に効果があるのは以下の3点によるものです。
①再石灰化の促進:食事によって歯の表面にプラークが形成され、内部の菌が酸を産生します。酸によって歯の表面(エナメル質)からカルシウムとリン酸が溶けだし、初期虫歯へとつながります。溶けだしたカルシウムとリン酸は再度エナメル質に取り込まれて再度結晶化しますが、フッ素が存在していることでこの作用(再石灰化)が促進されます。
②歯質の強化:前述の再石灰化において、歯の表面でハイドロキシアパタイトという結晶をつくりますが、ここにフッ素が加わることによってフルオロアパタイトを形成します。このフルオロアパタイトは酸に強いため、歯が虫歯に対して強くなります。
​③虫歯菌の抑制:フッ素は虫歯菌の活動を抑える効果があり、酸の産生を妨げます。 

 

フッ素が子供に良いと言われるのは何故?

 なぜ子供にフッ素を塗るのが良いのかというと、乳歯はエナメル質が薄く永久歯よりも柔らかいため虫歯になりやすいですが、その分フッ素をよく取り込むためより虫歯予防効果が高いからです。はえてきたばかりの永久歯も歯の表面の溝が深く、背が低いため歯ブラシを当てにくいせいで虫歯になりやすいので、フッ素が有効です。では、大人にフッ素を塗ることに意味がないかというと、子供ほどではありませんが虫歯予防効果が得られるうえ、知覚過敏を抑える効果もありますので十分に意味があると言えます。また、年を取って歯周病が進むと歯ぐきが下がって歯の根が露出します。この根の部分も虫歯になりやすく、ここにフッ素を塗ることでも虫歯を予防できます。
 

​フッ素の使い分けについて

 フッ素の使用方法ですが、低濃度フッ素と高濃度フッ素があり、主に家庭で用いられる歯磨き粉やうがい薬は低濃度フッ素に該当します。市販の歯磨き粉は濃度の上限が定められており(1,500ppm)、大人と子供では推奨濃度が異なります。 生後半年~6歳未満の子どもは500ppm、6歳〜14歳は1,000ppm、15歳以上で1,000~1,500ppmが推奨されています。大人のフッ素入り歯磨き粉を子供に使うと、過剰摂取になりますので、必ず使い分けるようにしましょう。低濃度フッ素は日常的に繰り返すことによって効果を得られます。高濃度フッ素は、主に歯科医院で行われるフッ素塗布を指し、専用の高濃度のジェル(9,000ppm)を使用します。上述の歯質の強化は、高濃度フッ素によってのみ得られるため、低濃度フッ素と併用することで高い虫歯予防効果が期待できます。形成されたフルオロアパタイトの持続期間は3~6ヶ月程度と言われていますので、この期間で繰り返し行うことが推奨されています。

 

フッ素は体に良くない?危険?

斑状歯

 フッ素は体に危険というイメージを持ち、フッ素塗布に対して懐疑的な方もいらっしゃいます。ネットや週刊誌の記事などでそういった危険を煽るような記事も存在します。確かにフッ素を過剰に摂取すると中毒症状を引き起こす場合がありますが、あくまで過剰に摂取した場合です。フッ素はミネラルの一種ですので、お茶や魚介類にも多く含まれており、とても身近なものです。皆さんが日常的に口にする食塩だって、過剰摂取すれば中毒症状を引き起こしますので、何事も必要以上に摂取してはいけないのと同じです。フッ素を過剰摂取した場合、急性中毒と慢性中毒があります。急性中毒は一度に大量のフッ素を摂取した場合に起こり、嘔吐・下痢・腹痛などの症状が見られます。急性症状が起こるのは体重1kgあたり2~5mg程度のフッ素が必要で、ざっくり言うと20kgの子供がフッ化物洗口液をボトル1本まるまる飲み干したり、子供用のフッ素入り歯磨き粉をまるまる1本飲み込んで起こるかどうかのレベルですので、普通に使っていて起こることはまずありません。ここから致死量まで及ぶにはさらに何倍もの量が必要になります。慢性中毒には歯のフッ素症(斑状歯)と骨のフッ素症(骨硬化症)があります。斑状歯になると歯の表面に白や茶色の斑点が生じ、不規則な形状だったり縞模様だったりと程度は人によって異なります。斑状歯になるには、生まれてから永久歯が作られる8歳くらいまでの間に日常的に高濃度のフッ素を摂取し続けることによって起こります。水道水のフッ素濃度が1.5ppmを超えると斑状歯のリスクが高まると言われていますが、現在の日本の水道はフッ素濃度が0.8ppm以下にするよう定められていますので、水道水によってフッ素症が起こることはまずありません。他には大人用のフッ素入り歯磨き粉を子供に使用したり、フッ化物洗口液を飲み込む、子供用のフッ素入り歯磨き粉を過剰に使うといった行為を日常的に行わない限りはフッ素症が起きることはありません。骨のフッ素症になると骨が硬化し、関節炎や骨粗鬆症などの諸症状を引き起こします。しかし、フッ素の濃度が8ppm以上の水を20年以上摂取することによって起こる可能性が生じるものですので、近代で水道が整備されている地域ではまず起こることはありません。他にも、フッ素によってがんのリスクが増す、知能が低下するといった説もありますが、いずれも根拠に乏しいものがほとんどかと思います。ただし、現時点では判明していないだけで、フッ素が100%問題ないとも当然ながら断言することはできません。フッ素を使わずとも日々の歯磨きや食習慣をしっかりやれば虫歯は予防できますので、不安に思う人は無理に使う必要はないと思います。逆にフッ素を塗っているから安心、と油断して歯磨きをおろそかにすると結局虫歯になりますので気を付けましょう。
 

幼児にも安心して使えるフッ素ジェル

 最後に、おすすめのフッ素ジェルを紹介します。ライオン社から販売しているCheck Up(チェックアップ)バナナ味です。これはフッ素の濃度が500ppmで研磨剤の成分が含まれていませんので、生後半年から6歳までの小さい子供にも問題なく使うことができます。1回に使用する量の目安は0.5歳~2歳頃で3mm、3~5歳頃で5mm以下です。美味しいので、子供たちも積極的に歯磨きしてくれます(笑)。あまり市販されていませんが、歯科医院やamazonで購入することができます。当院にも置いていますので興味がある方はぜひ。
 

Check Up(チェックアップ)バナナ味
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